靴選びのポイント⑥

こんにちは。本日もpelletteria ibona のブログをご覧いただきありがとうございます。

本日は久々に靴選びのポイントについてお話させていただきます。

靴の履きやすさを決めるポイント、要因をいくつかご紹介します。今回は主に女性の靴。特にパンプスについて書いていきますので、男性の方は次回以降にご期待ください。ただ、女性の靴だからといって男性に全く関係ないわけではなく、基本的には男性女性とも靴は同じ作りでできています。そこから男性の方にも共通する部分もご紹介しますし、もしかしたらご自分が抱える靴の悩みの原因に近づけるポイントが見つかるかもしれません。ぜひご期待ください。

 

まずは基本的なお話。ストラップで甲までしっかり止めるib5503-hdを参考にします。

基本的に靴のフィット感を決めるのは踵、甲、母指球の部分です。

 

上から見るとこんな感じで丸で囲まれた部分が大体そのあたりになります。

 

線で結ぶとこんな感じの三角形が出来ます。

この三角形の面積がより大きい方が単純に履きやすいといえるかと思います。一般的な履きやすさ、歩きやすさに関係しますが、もちろん幅が広すぎたりきつすぎたりといった事や、骨が出ているなど足の形、甲が高い低いでも足に合う合わないはでますので、三角形が大きいからといってイコール足に合うという事ではありません。ただ、大きい方が、覆う面積も大きくなりますので、色々な方の足に合いやすい傾向にはあるかと思います。

 

ではこの3点がどう足に関わり、歩くという行為に関わっていくのか説明します。

歩くという行為は

・接地している足を持ち上げる

・持ち上げた足を前へ運ぶ

・地面に着地する

これを左右順番に繰り返していく行為です。

 

持ち上げる時はつま先を残して踵から持ち上げていきます。

この時、母指球の部分が支点となり、甲の部分が力点と作用点、踵が同じく力点と作用点になります。

甲は 力点>作用点  踵は 作用点>力点 くらいの役割になります。

難しく書きましたが、簡単に言うと母指球で体重を支えながら、甲部分で足と靴を持ち上げ、踵は靴の引っ掛かりで一緒に持ち上がってくる感じです。ちなみにですが、ibonaを運営する株式会社名進の作る靴はメンズレディースともすべての靴が、踵の内側の素材を変えて作っています。つるっとして綺麗な革ではなく、少しざらっとして摩擦の強い素材です。それによって踵の引っ掛かりをよくし、抜けにくくしています。

 

次に持ち上げた足を前に運ぶ時です。

3点すべてで足を前に出しますのですべてが力点となり、作用点となります。靴を支える支点としてはつま先が下がっている前半がかかと部分、つま先が上がる後半が甲部分になります。

 

最後に接地するときです。

健康的で理想的な歩き方は踵から着地します。ほとんどの方はこの時踵の外側から着地するかと思います。男女問わずトップリフトの外側から減っていくのはこのためです。足裏を擦って引きずるように歩くのは足への負担が大きくなりますのでやめましょう。見栄えも美しくありません。着地の際は踵が支点になり、母指球が力点、甲はあまり役割がありませんが強いて言うなら作用点になります。

 

これを踏まえたうえで女性が履かれるパンプスを見ていきます。

画像で一目瞭然ですが、三角形の面積はとても小さくなっています。

3辺すべてが長いほうが面積も大きくなりバランスがよくなりますが、甲と母指球を結ぶ線が他の2本に比べて極端に短くなり、甲と踵を結ぶ線が長くなっています。足を持ち上げる際に、甲と母指球を結ぶ線が短くなることで支点と力点が近くなり、より大きな力が必要になります。さらに力点である甲と作用点である踵が遠くなることで同じように大きな力を必要とします。

それだけ女性のパンプスは浅く作られているということです。巷で話題になったkutooというハッシュタグが生まれたように、女性のパンプスとはこれだけ履きやすさを犠牲にして美しさを得ている靴ということが言えるかと思います。

繰り返しになりますが、履きやすい靴とは、甲と母指球、踵を線で結び、その中の三角形がバランスよく、面積も大きいものと言えます。60年にわたり靴を作り続けて生きた名進とzuccottoは、その事実の中でたくさんの工夫をしてきました。美しさを損なわないよう甲部分を少しでも深くした靴、また、甲まで覆うような深いデザインでも美しい靴を開発してきました。

画像は左がz0655で右がz682です。一般的にパンプスは0655のように甲部分のカットは左右対称になっていますが、682ではzuccottoのオリジナルとして、甲部分のカットを外側に斜めにカットし、左右非対称になっています。その分深くなり、履きやすさが改善され、足を美しく見せる効果も持たせました。

 

もう一つ。画像はz202です。こちらは甲までしっかりと覆うデザインのレースアップですが、重くならず、洗練されたデザインで美しさは折り紙付きの人気デザインです。個人的にはzuccottoの靴ではダントツに美しい靴だと思っています。

 

こちらも右側が以前あったデザイン、左が同じ木型を使用して作った新しいデザインの靴です。上から見ると少しではありますが、甲のカットを深くしています。これによって劇的にという訳ではありませんが、試着してみると明らかにわかるくらいに履きやすさが改善されています。

 

このように特に女性のパンプスですと、甲部分がとても重要になってきますが、甲部分が浅いことで実は踵部分の重要性も増してきます。サイズがあっていないため踵に大きく隙間があり、歩くたびにパカパカさせて歩いている方を見かけることがありますが、足を上げるときには踵がひっかかることで靴が持ち上がっています。その踵の引っ掛かりがゼロになってしまうと、足の指先で歩くことになります。画像にするとこんな感じです。

 

極端に三角形が小さくなり、踵で支えることができない分、母指球から新たに指先を支点としなければなりません。甲と母指球、そして指先で支えて歩くことになりますが、実際には指先と甲の2点のみで歩くことになります。指先で靴を支えながら持ち上げ、さらに脱げないように指先で引っ掛けて踏ん張るようにして歩くわけです。これでは足の負担はとても大きいものになり、当たり前ですがとても疲れることになります。

もしも、少し履くだけですごく疲れる。履きやすい靴が見つからない。そう感じている方はぜひとも一度、甲、母指球、踵の3点を意識して、それを結ぶ三角形をイメージし、ご自身の靴を見てみてください。もし問題があると感じた場合にはよりバランスよく大きな三角形の靴を探されることをお勧めします。

 

そしてもう一つ、最近人気の厚底靴、そしてストーム付きパンプスについて少しだけお話しします。

厚底もストームもほかの靴と違うのは、底部分に厚みを持たせていることです。厚底は全体に、ストームは底の前部分になります。厚底靴がzuccottoのラインアップになかったのでストームパンプスだけ載せてみます。赤の丸で囲った部分がストームです。

 

z8246

 

 

厚底もストームも普通の底の靴に比べて厚みがある分、歩いた時の地面からの衝撃を和らげるクッションとしての機能があります。またストームはヒール感を軽減してくれます。単純にですが、1.5センチのストームと8センチのヒールの靴では、感じる傾斜は差し引きして6.5センチのヒール感になります。

左がz8246で8.8センチヒールに1.5センチのストーム。差し引きで7.3センチのヒール感です。ストームのない右側がz683でストームのない8センチヒールです。微妙にですが、傾斜が柔らかくなっています。

もちろんこれらは歩きやすさや疲れやすさをに直結するとてもいいことでもありますが、デメリットもあります。どちらも厚みがある分固くなり曲がりにくくなることです。私たちの業界では返りが悪いと表現します。

先ほどのib5503です。クッション性があり程よい厚みがありながらも柔らかい素材の底なのでこれだけしなります。

zuccottoで販売しているフォーマルシューズです。革底に比べる柔らかいですが、それでもこれだけの違いがあります。

zuccottoの普通のパンプスです。ib5503と同じくらいにしっかりとしなります。

zuccottoのストーム付きパンプスです。前部分はストームがあるため全くしなりません。その分甲のカットを深くしたデザインです。

 

歩く際、足を持ち上げるときには母指球を支点にして少しずつ足を持ち上げていきます。底が柔らかく曲がることで支点の面積が広くなり持ち上げる際の力を分散させ小さな力をたくさん集めて持ち上げることができます。しかし、固い底の場合曲がらないので支点となる面積がとても小さくなり、一気に大きな力で持ち上げる必要が出てきます。それが疲れやすさに直結してきます。

そして女性のパンプスですとカットの浅さも相まって踵を持ち上げることができず、抜けてしまいます。そのため前述したように足先で歩くことにもつながっていきます。

 

まとめとして、靴選びでは甲と母指球、踵を結んだ三角形のバランスと大きさが重要なポイントです。今履いている靴に満足感を得られていない方は一度確認して見直してみてはいかがでしょうか。また人気の厚底靴屋ストーム付きの靴はメリットもしっかりありますが、デメリットもあります。自分の足と相談し、よく検討をしたうえで、一番負担のない靴を選びたいですね。

 

 

 

 

 

 

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