トンツクトンツク

こんにちは。いつもpelletteria ibonaのブログをご覧いただきありがとうございます。

 

 

 

今日は工房の様子として作業の一つをご紹介します。私が練習中の作業、ibonaの工房ではタイトルにあるようにトンツクと呼ばれていいます。どんな作業か、何になるのかは見てのお楽しみ。勘のいい人は多分途中で気づいてもらえると思います。

では早速作業をしてみます。

 

まずは裁断。裁断したものが下の画像です。今回は20ミリ幅で600ミリの長さで裁断しました。

 

次に漉き作業。この作業が出来上がりのほとんどをしめるくらい大事な作業になります。

薄すぎると強度が足りず、製品になった後にちぎれたり伸びてしまいます。逆に厚すぎるときれいな製品になりませんし、後で付ける金具に通らなかったりします。この漉き作業が工房で行われる作業の中で一番難しい作業だと個人的に感じています。作業前の漉き機の調整もコンマ何ミリという精度で各パーツを調整していきます。そのうえで刃をよく切れる状態に持っていき、厚みを決めるパーツの調整をします。調整をしても、この設定で〇〇ミリ!ということには絶対になりません。漉き具合の確認のためのサンプルを何度も通して設定していきます。その設定の間に刃は切れなくなっていきますのでそこも踏まえた調整が必要になります。漉く前の革の厚みが変われば漉き具合も変わりますし、固い革柔らかい革でも変わります。型押ししたものやエナメル加工、スムースでも変わります。同じ革でも場所によって変わるため、それに合わせた設定、調整をしなければなりません。いままでもどれだけ失敗したかわかりません。もちろん今も確信をもって作業をしたことがなく、うまくいったときはたまたまうまくいったといった手ごたえしか得られない作業です。

 

画像ではわかりにくいですが、左の漉く前の革が1.2ミリ。これを右の0.6ミリまで漉きました。

次にこれに糊を塗っていきます。塊にならないよう空気を含まないよう均一に塗ります。

糊を塗ったものに今度は綿テープを張ります。

伸び止めテープと呼ばれるものです。革だけだとその性質上使うと伸びていきますのでこのテープを中に入れることで伸びることを防ぎます。ちなみにですが、靴にもたくさん使われているテープです。ほとんどの靴では、履き口のトップラインに沿ってこの伸び止めテープが入っています。

テープを貼ったらもう一度糊を塗っていきます。この作業では革の断面であるコバ面にも糊がつくように塗っていきます。

 

それでは次の作業。タイトルにもなっているトンツクが始まります。

コバ面とコバ面の角をくっつけてトンカチで真上からたたいていきます。

リズムよくいけばトンツクトンツクと作業が進んでいきます。トンカチでたたく”トン”とコバ面をくっつける”ツク”。これでトンツクです。実際に私がやると”ツクツク””トントン”という感じでしかできていません。リズムが悪いので無駄に時間がかかってしまいます。

途中がこんな感じです。

もう一つのクロコ型押しの革でも同じようにやってみます。

出来上がりがこんな感じです。残念ながら製品に採用することはできないクオリティです。

左のスムース革は革同士が重なってしまいました。中心に来るはずの線もよく見るとぐねぐねとして、まっすぐではありません。逆に右の型押しは革が固かったためきちんと貼り合わせることができなかったのでくっつくべきところが離れてしまいました。隙間から伸び止めテープが見えてしまっています。

ちなみですが、ibonaの誇る天才女性職人のRINAさんが隣にいたのでトンツクをやってみてもらいました。それがこちらです。

ぱっと見ではそんなに大きな違いがあるように思わないかもしれませんが、製品としてちゃんとみると雲泥の差です。まず革の端と端がきちんとぴったりくっついています。私がやったように離れていたり逆に重なったりはしていません。またこの直線がきちんと常に真ん中を通ってまっすぐな線になっています。

幅も測ってみました。私のはだいたい9ミリですが、場所によって8.5ミリだったり9.5ミリだったりします。対してRINAさんのはどこを測ってもぴったり9ミリになっていました。ここから安定した製品としてのクオリティが見て取れます。

そしてかかった時間です。私が四苦八苦しながらやっと1本できたという感じなのに対し、RINAさんはトンツクトンツクとさっさと2本貼り合わせていました。

いい職人というのは作り上げる製品の質もそうですが、時間をかけないのも大事な条件であるといわれます。どんなにいい製品をつくっても、無駄に時間をかけお客様を長く待たせるのは決していい職人ではありません。可能な限り短い時間で最高の製品を作りお客様にお届けする。これが本当にいい職人なんだと思います。

作り手の大きな差が見えた瞬間でした。

 

話がずれましたが、このトンツク。何になるのでしょうか。もうお気づきの方は多いかと思います。ibonaの製品でたくさん使われている、ストラップ状のものはほとんどがこの製法で作られています。

 

[全5色]クラックゴート / リールキーリング(交換用リール付き)

クロコダイルエンボスレザー(ピンク・アイボリー)/ リール・パスケース

こういったストラップはこの製法です。

 

[全6色]ナチュラルオイルワックス / L-ZIPスマートキーケース

[全6色]イタリアンカーフ(手染め) / エクレアコインケース

こういった小物のファスナーの引手も同じ製法で作っています。

 

クロコダイルエンボスレザー/ ラージトートバッグ(ブラック)

ソフトカーフ / フラップミニショルダーバッグ

大きいものですと、これらのバッグの持ち手部分。ショルダーベルトなども同じ製法です。

 

ちなみにですが、

zuccottoのZ-3223。この靴の靴紐は、出来上がりは違うものにしてありますが、同じ手法で作っています。

こんな感じでいろいろな製品で使われているこのトンツクです。ファスナーの引手などは15ミリ位の細い抜型で抜いて細く作ります。逆にバッグの持ち手などは40ミリ位の大きな型で抜いて太く、丈夫で持ちやすい作りにします。今回はトンツクまでですが、この後にミシンを掛けたりして製品になっていきます。

ibonaではこんな感じでミシンなどの機械を使う部分ももちろんありますが、それ以外のほとんどの部分を職人の手によって作っています。

もし気になる製品などありましたら、ぜひとも使ってみて職人の手仕事を感じてみてください。

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