靴作りのご紹介その④ 美しい靴がお客様の手元に届くまで
皆様あけましておめでとうございます。本年もpeletteria ibonaをどうぞよろしくお願いいたします。
それでは早速、かなりの長編になりました靴作りシリーズ。やっとのことでフィナーレを迎えました。
それでは早速続きから
つり込みは終わりましたが、靴の裏はこんな感じです。
真ん中の中底部分とつり込んだ革の部分に段差が出来ています。それをきれいにならしていきます。
手と包丁で削ることもありますが、このグラインダーを使うことが多いです。革の強さを残しながら、薄くなだらかに削って段差をなくしていきます。この時に革の銀面をはがすことが出来ます。銀面はつるつるとしていて糊がのりにくいので基本的にはがさなければいけません。
ヒールがつく場合はその部分を別の機械でさらに均します。
これも手作業で行っていきます。
底付け専用の最強の接着力のある糊です。グラインダーを使って底面を均したことで革の銀面がとれ、より接着力も増しています。ただ塗るだけにも見えますが、はみ出すと靴になったときに糊が見えてしまい商品にはなりません。逆に足りないと底の接着が不十分になり隙間が出来たり、最悪の場合ははがれたりします。塗った後はしっかりと乾かしていきます。
同じように本底にも糊を塗っていきます。本底の表面は中底や革のトコ面とちがいつるつるしています。このまま糊を塗るとはがれてしまうので下地材をまずは塗っていきます。余談ですが、糊や染料など強いにおいのものが多い工房ですが、この下地材のにおいが一番苦手です。下地材がよく乾いたら次に糊を塗っていきます。
前回の記事で書きましたがこの本底を貼る糊はもともとが強力な糊ですがさらに熱活性を加えて接着力を強化していきます。
熱活性させたものを冷める前に貼り合わせていきます。縦にも横にもずれないように目と手で確認をしながら貼り合わせていきます。強力な糊なのでちょっとくっついただけでもなかなかはがれませんが、貼ったあとにトンカチでしっかりたたいて圧着していきます。そのためにトンカチも専用のもので、広い部分や狭い部分、カーブなどいろいろな場所をしっかりと圧着できる作りになっています。
手でしっかりと貼った後に、さらに機械を使って貼っていきます。油圧を使うことで底面の曲線もしっかりと貼り付けます。
実はこの機械も間違いがあるととても危険です。おそらく何百キロ、もしかしたら何トンという力がかかっているのだと思います。もし圧着中にずれて横に飛び出したら、靴の片足とはいえ、木型が入っていますのでそれなりの重さがあります。それが飛んでくることになります。大けがや最悪のケースも想像できるとても怖い機械です。
木型を抜いていきます。機械で行う工房もあるかもしれませんが、名進では手作業です。うまくコツをつかまないと全く抜けません。革の強さを改めて感じます。
木型が抜けたらibonaのレザースニーカーは別のラインに行きます。専用のミシンで本底とアッパーを縫い付けていきます。
縫ったら糸の処理をし、専用のカップインソールの中敷きを入れて仕上げます。
レザースニーカーと違いパンプスはヒールを打つ工程があります。専用の機械をつかいネジとくぎを使ってヒールをつけていきます。
終わりが見えてきました。中敷きを貼っていきます。ibonaのレザースニーカーはカップインソールなので中敷きになる専用のクッション素材にロゴを箔押しした革をあらかじめ貼り、もう一度裁断して作ります。
出来上がったものをスポッと入れたら中敷きは完成です。カップインソール以外の靴は箔押しやネームを縫い付けた革を貼り付けます。この時に使用するのが片面だけの糊です。貼るだけと思われがちですが、うまくやらないと靴の中で歪んでしまいます。靴の中は見ながら貼ることが出来ないのでこれも経験と勘で行う作業です。
最後に仕上げです。靴紐をつけたり糊や汚れを取り除いたり、靴クリームで磨いたりします。その後にきれいに箱に詰めたら商品の完成です。お客様が箱を開けて商品を見たときに美しいと思えるかどうかはこの工程がとても大きくかかわってきます。
本当に長々とお付き合いいただきありがとうございました。なるべく詳細にかいていったつもりです。書ききれなかった細かい部分もまだ残っていますし、技法やコツ、ポイントなども紹介しきれてはいません。もちろん私がまだ知らない職人技もきっとあると思います。それらはまたいつかご紹介出来たらなと思います。こんなにだらだらと長い文章を読んでくれた方がいらっしゃればうれしいです。
コメントを残す