靴作りのご紹介その② 今回は甲革師さんの出番です。

こんにちは。本日もpelletteria ibonaのブログをご覧いただきありがとうございます。

 

前回に引き続きまして靴作りの工程をなるべく詳細にご紹介していこうかと思います。合わせて実店舗でよくある質問「こういうことはできないの」についてもお応えしていきます。

前回の振り返りにもなりますが、名進の工房では足を測っての靴作りは行っておりません。ビスポークと呼ばれる本当のフルオーダーも比較的お手頃にできるオーダーもです。そうではなく実際に履いて試して好きな色好きな革でというカラーオーダーをZUCCOTTOで行っています。

理由は簡単。お値段がとんでもないことになるからです。ビスポークのように膨大な時間と手間をかけて行わないと本当に足に合ったといえる靴は作れませんしどれだけ時間と手間をかけても難しいこともあります。それは職人の技術がどうこうではなく、お客様の感じ方や足の筋肉や皮下脂肪の構成など数値にはできない部分もあるからです。

もちろんざっくりとした計測と聞き取りで作ることも可能です。それにより測って作ってもらったという「満足感」を得てもらうことも可能かもしれません。しかしその付加価値に対し代金を頂戴することに個人的には抵抗があります。ですので今のまま、実際に履いて気に入ったものを好きな色でというカラーオーダーが一番提案しやすく、お値段もほとんどの革で3000円前後の手数料をいただくだけで可能です。

前置きが長くなりましたが、前回の続きから紹介していきます。

 

抜型を使用し革を裁断する

これまでの工程で量産が決定し、抜型が完成しました。

これを使い革を裁断していきます。要領はクッキーの型抜きと同じです。刃がついた型を革の上に置き裁断機で上からプレスして革を裁断します。クッキーと同じというとお手頃感が出ますが、実際には革はとても丈夫で強い素材です、抜型を手でおしても絶対に切れることはありません。裁断機を用いて数トンという圧力をかけることで裁断が出来ます。上の画像でプレーンパンプスの抜型1足分です。近くで見ると

こんな感じで両面に刃がついています。裏返すことで、この1セットで1足分裁断することが出来ます。これが各サイズ用意されています。

裁断の時に注意する点は色々ありますが、まずは命の副産物でもある革を無駄にしないことです。大事に可能な限りロスが出ないよう裁断します。また、革には一枚一枚傷や血筋、トラなどの個性があります。それを活かすもの、逆にそういったものを使わずきれいな部分だけを使うものなど用途によって目で確認しながらの作業です。

そして革には伸びる方向というのがあります。靴やバッグなどは伸びるべき方向、伸びてはいけない方向があります。それは経験と目と、実際に手で触れることで確認しながら裁断していきます。

裁断師の人にはほかに気にしているところや大切にしていることなどがあるかもしれませんが私はわかる範囲ですとこんな感じです。

もう一つ、なぜ抜型を使うのかという事です。日本人の傾向として手仕事であればあるほどいいという考え方があるかと思います。ミシン縫いよりも手縫いがいい、同じように裁断であれば抜型や裁断機を使うのではなく手で裁ったものの方がいいものという気がする方が多いのではないでしょうか。もちろんそういった作業もあると思いますが、裁断に関しては裁断機を使う方がいいものを作ることが出来ると思います。裁断機を使えばきちんと抜型の形に裁断が出来ます。10枚でも20枚でも同じ形に均一になります。直線もカーブもがたつくことなくきれいです。手で裁つ場合、どうしても一度で切り切れなければ境目が出来てしまいますし、革は伸びます。どんな職人でも1枚1枚にほんの少しの差異が出てしまいます。そして、靴は何足もたくさん作ります。抜型を作るコストはかかりますが、靴を作れば作るほど、時間と人件費を節約でき償却することが出来ます。

この段階で「ここを浅くできないの」「ストラップをつけれないの」という質問への答えがわかって頂けるかと思います。この抜型により裁断しますので縫製をする前の革の形を変えることはできません。もしできるとしたら手裁ちで作るしかなくなります。そのうえで何回かはモニタリングも必要になりますので抜型の費用は掛かりませんが、一番高い人件費が必要になります。お値段もそれに応じて高くなってしまいます。

甲革(アッパーを作る)

これは専門に行う甲革師さんがいます。ザ・靴職人という感じで一番職人感がある方たちです。

今回の甲革作成の流れは私が実際に作った甲革をばらして、それを戻していく感じで説明します。撮影用に赤い糸を使ったりしていますが、普通は革に合わせた糸を使います。

これが裁断した後の革です。左上のベージュのものから時計回りに裏革、スベリ、本体のつま先から外側を踵までの表革、踵から内側の表革です。一番シンプルなプレーンパンプスです。これを型紙に合わせて甲革にしていきます。歴戦の甲革師さんはすべて頭に入っていて型紙も必要としない場合もあります。

漉き作業です。漉くというのは、革を薄くすることです。革が重なる、折り返す部分はそのままだと他の一枚の部分に比べて2枚になるため厚くなります。その為形が崩れたり、足に食い込んだりといいことがありません。なのであらかじめ漉いておきます。漉き方も色々で、幅広く漉いたり狭く漉いたり、ギリギリまで薄く漉いたりほどほどの厚みを残したりと、革の性質や場所、工程によって漉き分けます。漉いたら裏革を貼りこみます。貼り代に糊を塗って型紙通りに貼りこみます。

次にミシン掛け

表側はまずは継ぐ部分を片方だけミシンをかけ、二つを一枚にします。説明が難しいですが裏返して重ねて、そこにミシンをかけひっくり返す感じです。ミシンをかけたら裏に伸びるのを防ぐ綿テープを貼ります。

裏革は貼りこんだ部分をそのままミシン掛けして裏革と踵部分のスベリを一つにします。

次はヘリ折り

このパンプスはトップラインがヘリ折りという技法でできています。決められた幅で漉いたトップラインに糊を塗り、刻みを入れていきます。

違う靴での職人さんの画像ですがかっこいいですね。トップラインにも綿テープを貼り、折っていきます。型紙できまっている端から何ミリで貼り、何ミリで折るという規則通りにヘリ折りをします。

その後はもう一度ミシン掛け。残ったもう一方の継ぐ部分を同じように縫い合わせ綿テープを貼ります。

通称ケツバチという革を付けたら裏革と表革を貼り合わせます。何度かやったことがありますが、この貼り合わせはとても難しいです。平面できれいに貼れても立体にすると歪んでしまったりします。職人さんは余裕の一発で決めてくれました。

トップラインにミシンをかけます。一番目立つ部分ですのできれいにきれいにかけていきます。

先芯を貼ります。次回以降の記事で詳しく説明しますが、靴のつま先には芯が入っています。

最後にはみ出させておいた裏革を専用のマチ切りで切っていき完成です。

 

今回はここまでです。大変な作業ですが職人さんはこれをちゃちゃっとやってしまいます。

ちなみにですが、先芯部分に裏革がないことに気づいた方はかなりの通かもしれません、そうでなければ同業の方でしょう。今回作ったパンプスはかなり昔の型のようで裏革が先芯の所で切れています。聞いてみたところ、昔の名残のようで、先芯部分は捨て寸といって足が入らない部分です。なので革を無駄にしないためと節約のためにここの革はないそうです。もう一つの理由として特にポインテッドトウのつま先は釣込むときに薄い方がきれいに仕上がるからだそうです。

では次回は本底作りからご紹介していきます。

 

 

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