靴選びのポイント③ 素材 底編
こんにちは。いつもpelletteria ibonaのブログをご覧いただきありがとうございます。太田です。
何回連載になるか先の見えない私の靴選びシリーズですが今回は③として素材の違い、特に底部材の違いについてお話いたします。
これまでのシリーズはこちら
前回の記事で靴の部材として、革で作るアッパー、本底、中底という主材料をご紹介しましたが、今回はその中の底部材についてです。
まずは本底。このブログ、ibonaのレザースニーカーでおなじみのエクストラライトソールやビブラムソールなどです。靴の多くを構成する革ですが、実はそんなに重いものではありません。靴の重さを決める一番大きなものがこの本底になります。株式会社名進で使用しているのは上記の2つ以外にもたくさんあります。
世界的に革靴で上質で高級なものはよりクラシカルで昔から素材や形を変えないものが多くを占めています。実際に何十万とする高級な紳士靴はみな一様に革底を使っています。名進でも以前は革底を使った製品もありましたが、現在は生産していません。革底を否定するつもりはありませんが、現在使用していない名進の立場からのお話をさせていただくと、革底は固い点、滑る点、水が浸みる等のデメリットがあります。固いのと水が浸みる、この2点はそういうものとして、こだわりを持って作り、その良さをお客様にも理解をしてもらうことは難しくないかもしれませんが、滑りやすい点、これは大きな事故になる可能性が十分にあり、そういうものだからという、軽い考えで放置するわけにはいきませんでした。何年も前にはなりますが、名進はこの点について大きく転換をし、現在は紳士靴、婦人靴とも革底の製品は作っていません。
この革底にかわる素材として取り入れたものを現在も使用していますが、それがこちらになります。
上は婦人靴で使用している合成ゴムの底です。裏には滑り止めの刻みも入っています。女性の靴は底の面積が小さいこともあり、このような仕様になっています。下の画像は紳士靴で使用しているオクスキー素材とクレープ素材です。婦人用のように刻みはありませんがどちらも特に滑り止めがきちんときく素材です。他にもラバーソールなども使用しています。
この本底は使える靴使えない靴があるため、革の時のように序列をつけるのは難しいですが、単純に厚く柔らかいものほどクッション性がいいため、足にやさしい素材になります。女性のパンプスなどに使う底材は優美性のためどうしても薄いものを使います。ですのでパンプスは長時間履けなかったり、履くことがつらい、その理由の大きなものの一つがこの底の薄さです。
次に中底ですが、これを気にしてみる方は稀かなと思います。靴を履くと地面と足の間に、足側から中敷き、中底、本底があります。中底は足にも地面にも直接触れることはありませんが、足当たりの良さを生み出し地面からの衝撃などを吸収するとても重要な役割を持っています。余談ですが、本革で製造するアッパー以外の部材の進歩はすさまじく、ボロネーゼ(ボローニャ)製法といわれる製法を最近見なくなった理由の一つにこの中底の進歩、進化がかかわっているそうです。中底がより足当たりよく、柔らかくなったため、同じ長所をもつこの製法のよさが際立つことが無くなり、手間がかかり高価になるこの製法は使われなくなっていったとの説があります。必ずしもこれだけが理由ではないと思いますが、理由の一つではあるようです。
中底に関しては選択肢が少なく、いろいろな中底を使っているメーカーもあまりないため、比較できません。それでも近年らくちんパンプスといった形で、クッション性により機能を持たせたパンプスなどが出てきています。ただし、クッション性をよくするために、靴のつま先側を厚くした中底やクッションを入れるため、パンプスのつま先側が大きくなります。イメージとしてはおでこ靴に近くなり、パンプスとしての美しさという点ではどうしても損なわれてしまいます。
靴、特に女性の靴というのは優美性とか快適性が反比例に近い関係のため、美しさを求めればどうしても快適さが失われます。10センチを超えるハイヒールなどがその一例です。逆に快適性を求めると美しさが犠牲になります。コンフォートシューズが一例です。世界中のデザイナーや靴職人たちは常にこれらの両立を求め、最適なバランスを探しながら、さらには両立できる新たな形を見つけるため新しい靴を作ります。
長くなりましたが、素材の違いがどう履き心地につながっていくのかお話させていただきました。新しい靴を買うとき、足に合う靴がなくて困ったとき、一助になればと思います。
靴屋さんの店員は知識も豊富な方が多いと思いますので気になる事、分からないことなどどんどん聞いて自分に一番合った靴を選んでみてください。
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