靴作りのご紹介その③よく聞くつり込みとはこんな作業です。
こんにちは。いつもpelletteria ibonaのブログをご覧いただきありがとうございます。
靴作りの工程第3回目です。なるべく回数を減らしてご案内できるよう今日は前置きをすっ飛ばしてこのまま工程紹介に行きます。
前回で甲革(アッパー)が完成しました。その続きからです。
本底とはアウトソールの事です。靴の地面に触れる部分でibonaのレザースニーカーではビブラムやフィンプロジェクトのソールを使用しています。ibonaのレザースニーカーではすでに成形されてすぐに使えるものを仕入れていますので、加工などは必要ありませんが、ZUCCOTTOのパンプスなどは全く加工されていない原板を仕入れ自社で加工し使用しています。
自社で加工するようになったのはつい最近のことで、まだひと月とちょっとといったところでしょうか。社長曰く難しい作業ではないとの事ですが、今のところ社長のお仕事になっています。
まずは革と同じように裁断機で裁断します。革より厚く硬い素材なので抜型の刃も厚く丈夫なものになります。
原板に作られた滑り止めの模様を左右きれいに合わせて裁断します。
本底も革と一緒でつま先から踵まで均一な厚みになっています。ですが、ヒールに沿わせてめくりあげる部分などは薄く漉かなければきれいに貼ることはできません。
この機械で必要な部分だけ薄く漉き加工をすることできれいに貼ることが出来るようになります。漉いた後のものはこんな感じです。
この後にコバ面を整えたり溝を作ったりといった作業がありますが、これでほぼ本底が完成です。
ここからがつり込みの作業になります。名進ではここから仕上げの前まで、もしくは仕上げまでを総称して底付けと呼んだりもします。つり込みも底付けも仕上げもすべて同じフロアで行うため、底付け部に任せると靴が完成品として出来上がってくるからです。
そこでの一番最初の作業が中底を木型に貼ることです。貼るとはいっても糊を使うわけではありません。糊を使うと木型が外せなくなってしまいます。中底を貼るのにはホチキスの針を打ち込むような機械を使います。エアーコンプレッサーで打ち込む、大工さんが使うような工具です。これで木型に中底を仮止めしていきます。
靴のかかと部分にはつま先と同じように芯が入っています。これにより踵のフィット感や歩きやすさを作り出しています。これを専用の機械を使って入れていきます。
このカウンターの素材は硬いですが、温めるとぐにゃぐにゃに柔らかくなります。その状態で木型に合うよう成形します。冷えるとまた硬くなりきちんと固定することが出来るようになります。
これもつり込みの準備です。中底の裏面に糊を塗って乾かします。同じように甲革ののり代にも糊を塗ります。ここまで何度も糊が出てきていますが、使うのは専用の糊で、よくあるスティックのりのようなものではありません。有機溶剤のようなにおいのするどろっと粘度の高い液体の糊です。糊というより接着剤という方がイメージしやすいかもしれません。糊という呼び方も名進での通称です。スティックのりなどは片面にぬって貼りますが、これらの業務用の糊は貼り合わせるもの両方に塗り、糊と糊を貼り付けます。ですので今回も中底と甲革を貼るので両方に糊を塗っていきます。ちなみに使う糊も様々で粘度や強さも変わりますし、スティックのりのように片面だけに塗るものも限定的ではありますが使っています。共通するのは塗った後に乾かしてから貼る点です。他にも後で出てきますが、底を貼る糊は熱活性といって一度塗って乾かした後に熱を加えて接着力を強化してから貼るものもあります。
ここからも職人感たっぷりな作業になります。木型に甲革を手で軽く釣込んだ後にトウラスターという機械でつり込んでいきます。名進にあるトウラスターはイタリアから輸入したもので、日本にも数台しかないような高品質なものです。お値段がいくらするのか想像もできませんが、大きくてSF映画に出てきそうなマシーン感がすごい機械です。
この機械を使ってまずはつま先部分を木型に沿わせるように甲革を成形していきます。木型の形や革の性質、同じ靴でもサイズの違いなど細かく設定をしながらのつり込みです。釣込む力が強すぎると革が裂けたり割れたりします。逆に弱すぎると木型にきちんと沿うことが出来ず成形が出来ません。職人の勘と経験がものをいう作業です。
つま先が釣込めたら次は土踏まずあたり、真ん中部分を釣込みます。ここは職人が手でつり込んでいきます。ワニと呼ばれる専用のペンチを使い強すぎず弱すぎずの絶妙な力加減で引っ張りこみ、貼り付けてから釘で固定していきます。
最後に踵のつり込みです。ここではもう一度機械を使って釣込みます。先ほどとはまた違う機械です。
これでつり込みの工程は終わりです。
つぎからは底付けが始まります。もう少しだけお付き合いください。
コメントを残す