イタリアンレザーとは?特徴を簡単に解説。

革には種類がたくさんあります。
日本では合成皮革、人工皮革などの「本革」ではないものも「革」とされており、「本革」と言っても山羊や馬、豚などなど、、、使われる動物の種類もさまざまです。
そんな「革」という素材ですが、イボーナが使用しているのは主にイタリアンレザー。牛の革であり「本革」です。
今回の記事では製法や歴史などの難しいお話ではなく、名古屋の工房で日々革を触っているスタッフ目線で、
イタリアンレザーってどんな感じの素材?
にお答えしていきます。

イタリアンレザーも種類はいろいろ。

イタリアンレザーと聞くと「何となく良さそう」という認識の方も多いのではないでしょうか。(世界三大皮革のうちの一つと言われています)
ですが、実際のところイタリアンレザーと言っても種類はさまざまで、「イタリアンレザー」と一括りにして解説することは難しいです。
そこで今回はイタリアンレザーらしさ。というニュアンスで解説していきます。
-Memo-
鞣し(なめし)=動物の皮を、革製品に使える素材としての革にする事。
◩イタリアンレザーの特徴
さっそくですがイタリアンレザーの特徴を3つに絞りました。

1.天然素材ならではの風合い
バケッタ製法と呼ばれるイタリアの伝統的な革の鞣しは、現代の効率的な革の鞣しと比べて時間と労力がかかりますが、自然な風合いを保ったまま仕上げることができます。

トラ模様と呼ばれる皺のようなものがあったり、血管の跡(血筋)、そして繊維密度の違いなどによって生まれるシボの個体差などさまざまな風合いがありますが、そういった天然素材ならではの表情を楽しむことができるのがイタリアンレザー。

「本革はすべてそうじゃないの?」と思われるかもしれませんが、実は本革でも合皮と区別がつかないような仕上げをしたものも結構あります。
現代の技術では、本革の上にプリントをすることもできれば、革の表面を顔料で覆う事で均一な色にすることもできますし、型押しなどを施すことで全面に同じ模様の凹凸を付けることもできます。
そのような革は本革らしい自然な風合いを楽しむことはできませんが、全体を均一な風合いにする事で、状態の悪い革でも無駄がなく使う事ができ、最終的な製品の仕上がりも均一で安定します。
食肉の副産物として出てくる動物の革を無駄なく使うことができ、革らしさを損なってもやはり本革は本革なので、合皮と比較すると長く使える素材でメリットも沢山あります。
本革(イタリアンレザー)のような合皮を作るのはおそらく不可能ですが、一見すると合皮のように見える加工を施した本革はたくさんある。といった感じでしょうか。
まとめると「これって本革かな?合皮かな?」なんてことにならないのがイタリアンレザー。と言えます。
「これはさすがに本革だよね」と。
▲工房の1枚革を見たい方はこちらもぜひ
ちなみに、、
イボーナのオンラインショップでは、ご注文時に個体の希望を受け付けております。「できるだけシボが多め!」などと備考欄にご入力いただくと、スタッフが在庫の中から希望に近いものを選んでお送りいたします。
※ご希望に合わせて製作するわけではないので、確実にご希望に沿えるわけではありません。
2.経年変化(エイジング)
使い込むにつれて味わいを増していく経年変化(エイジング)もイタリアンレザーの醍醐味です。
実は「本革=長く使える」はほぼ間違いないのですが、「本革=経年変化」はあくまで一部の革に限った事。
イボーナで使っているイタリアンレザーは特に経年変化しやすい素材ですが、経年変化にも個性があり、使用環境・収納量・使用頻度などでそれぞれの変化を見せてくれるのが面白いところ。

さらにイタリアンレザーと呼ばれる革の多くは、製造工程でオイルを含ませた『オイルレザー』なので、オイルでケアをする必要がありません。
手で頻繁に触れる財布やキーケース、小さな鞄は、ケアをしなくても日常的に手の油分に触れるので経年変化が進んでいきます。
「革製品はケアが大変そうだからついつい避けてきた」と言う人にもイタリアンレザーはおすすめです。

3.環境負荷が少ない
イタリアンレザーに使われる牛革は食肉産業の副産物です。
革のためだけに動物が育てられることはなく、使われなかった革が焼却されてしまうこともありません。動物の命を無駄にしないよう、資源を大切に有効活用しています。
また、伝統的な製法であるため化学薬品は使われず、バケッタ製法の鞣しで使われる植物タンニンは100%天然由来なので、最終的には99%が土に還ると言われています。
そういった点から考えると、合成皮革のように合成樹脂を使わず、ビニールもプラスチックも含まない為、現状はエコな素材と言えると思います。

◩イタリアンレザーのデメリット
イタリアンレザーは世界的に評価されている素材には間違いないのですが、やはり良い事ばかりではなくデメリットと言えることもあります。
デメリットも3つにまとめました。
①水に弱い
本革ならではの自然な風合いを存分に残すためには、革自体を薄化粧で仕上げる必要があります。
薄化粧という事は表面にコーティングなどが施されていないので、水が付くとどうしても染みていってしまいます。
防水スプレーを使う、雨予報の時は使用を控える、などの対策をするも良いですし、多少の水シミは気にしないで使うのも良いと思います。(経年変化が進んでいくと革内部のオイルが染み出て、若干水をはじきやすくなりますよ。)
ブラックの場合は水シミができにくいですが、ブラウンはシミが目立ちやすい特徴があります。

私(加藤)が数年使用している『トルニオA4トート』にはわずかに水シミがありますが、あまり気にしておらず、気が付けば良い相棒になっています。

遠くから見ればそこまで気になりません。(個人的には)
②均一ではない
本革らしい風合いが残っているという事は、革自体が均一ではないという事で、傷があったりシミのようなものがあったり、色の濃淡があったり、少し硬い部分があったり柔らかい部分があったり。

そんな不均一な風合いは好みがわかれるところではありますね。
イボーナの鞄や小物にも革キズや色ムラ、トラやシボなどさまざまな表情が含まれます。
そういった風合いをイボーナでは「唯一無二の個性」と捉えていますが、「不均一・不安定」と捉えることもできるかと思います。
③色落ち・色移りがある
革の色が服へ。服の色が革へ。という具合に色が移ることがあるのもデメリットと言えます。湿度の高い日や汗などで濡れたまま使用していると色が移る可能性が高くなります。
白い服にブラックの革の色が移ったり、履いているデニムの色がブラウンの鞄に移ったりする事がありますが、黒い服、黒い鞄に色が移る事は無かったり、黒い鞄でも使い込んでいくと色が移りにくくなったり。環境によってさまざまですが、デニムの色が革に移ると元に戻すことは難しいので注意が必要です。
使い込むにつれて革からの色移りは起こりにくくなっていきますので、使い初めだけ気を付ければ大丈夫かもしれません。
まとめ(実はイタリアンレザーはなく、、)
上記を踏まえて、
イタリアンレザーという言葉を見た時には
「天然素材ならではのナチュラルさが特徴で経年変化していく牛革」
というイメージを持って間違いない!
ですが、、、実は今回の内容はイタリアンレザーの話でもあり、バケッタ製法の特徴となります。
なぜそうなったかと言うと、一般的にイタリアンレザーといえばバケッタ製法。だからです。
イタリアで鞣された革を「イタリアンレザー」とするのであれば、今回の解説の例外は山ほどありますので、今後イタリアンレザーの製品を見つけた際には
- 「バケッタ製法」
- 「タンニン鞣し」
- 「トスカーナ」
などのキーワードを探してみてください。
(バケッタ製法はイタリアのトスカーナ地方で盛んな製法)
また、人気のあるイタリアンレザーは革の素材自体がひとつのブランドのようになっており、革に名前が付けられている事も多いので、迷った際は革の名前をお店に聞いてみるのも良いかもしれません。
ちなみにイボーナのオンラインショップでは各商品ページに素材の名前が記載してあります。

もちろん「トスカーナ地方で鞣されたバケッタ製法のイタリアンレザー」です。
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